私は、今まで犬の行動学、心理学に基づいたトレーニングすることで犬の問題行動が解決するのだと信じていました。

私のこの思いを変えさえたのは、あるアメリカの保護団体のドキュメンタリーと私が自分が携わりたいと強く思っているプロジェクトのひとつ、プーチプロジェクトのドキュメンタリーです。


保護施設は、ユタ州にあるベストフレンズという保護団体の活動の内容でした。

その施設のトレーナーたちは、私のように犬の行動学、心理学を勉強しているように思えないような発言をしていますし、実際に私ならもっと違うアプローチをするだろうなぁと思えることもありました。


それでも、犬たちはだんだんと良い方向に変化していました。
彼らにあったのは、犬たちへの強い愛だけだと思いました。

誰でもすぐにあきらめるだろう闘犬の保護活動は、本当に愛情を持った接し方を一環して通して、犬の心を救っているのを目の当たりにしました。

それは、その後見たプロジェクトプーチのドキュメントにも言えることでした。
プロジェクトプーチは、少年院の青年たちに保護施設から犬を引取り、青年たちにトレーニングさせて里親に出すプログラムです。


この青年たちもトレーニングの難しいことなど何ひとつ分かっている訳ではありませんでしたが、問題を抱えて飼い主から見捨てられた犬たちを見事に良い犬に3ヶ月でトレーニングしていたのです。

この青年たちも担当する犬への愛情の深さ以外に何もなかったと思えるのです。


ああ、そうだ。

私たちは、犬のことを知らないと犬を教えられないって思い込んでいたんだ。
大切なのは、どれほど犬を愛しているのかってことじゃないか!と思い知らされました。


私の教室で長い間トレーニングを学んでいる飼い主さんたちは、上手にトレーニングできる人たちではないかも知れないけれども、誰よりも自分の犬を愛している人たちであると断言できます。


自分の犬のために自分すら変えることができるなら、どんな問題も克服できるということを私は科学的な根拠という言葉で忘れかけていました。


行動学者が飼い主と愛犬の関係を作るのではない。
飼い主を支えて、愛犬と良い関係を作れるようにサポートすることが私のすべきことだと思い直させてくれました。

中には、自分の性格なんて変えられないという飼い主もいます。
それは、まだ愛犬への思いが足らないのだと思います。

愛犬は、自分を選んでやってきた訳ではない。
でも飼い主は、そのワンコを選んだのです。

犬と暮らすことは、飼い主に責任を発生させます。
犬たちは、私たち人間とは異なる生き物です。

この生き物を人間の世界で一緒に生活させねばなりません。
犬たちに無理を強いるのです。
ですから、犬たちを精神的に支え、愛犬のためにできる最大限のことをするのは、私からすると当たり前のことだと思えます。

自分のことを優先するしかできないなら、犬と暮らすべきではないのです。
他にも犬から与えられることがあります。
それを考えたら自分を変えることなどなんでもないことだと私は思えるのです。

実際に、プロジェクトプーチでは、他人を信じることができなかった青年が、また人を信じることで担当犬のトレーニングに必要な手助けを得ることができるようになっていました。

飼い主にも強い愛情を犬に持ってもらえるようにすることがとても大切だと今は思えます。