近頃、少なくなりましたが私のところにインストラクターを目指している方が尋ねていらっしゃいます。

私の生徒さんの中に実際にインストラクターとして活躍している人がいます。

専門学校の教え子がプロトレーナーとして活動しています。

実際に、私は自分のスクールで「指導者育成プログラム」もやっています。


でも、いつも口癖のように言っていることは、「犬のしつけ教室のインストラクターでは生活して行けるほどの稼ぎを得ることは難しい。何かお金が稼げる方法を確保しておく必要があるよ。」と言っています。


私がものすごーく稼いでいると思っている人も多いようですが、実際のところ、お恥ずかしい話ですが姉から「あなたの歳で仕事している人は、もうかなりの額の貯金を持っているものよ!あなたみたいに働き始めた人ほどしか蓄えがないなんて社会人としては大いに問題アリね!」と叱られたほどです。


確かに稼いでいるように見えますが、今の自分の技術や知識や情報を得るために、私がかけている手間やお金については、なかなかわかってもらっていないようです。

決して外車を乗り回して、豪勢な生活ができるような稼ぎを得られる訳ではありません。


自分に投資している金額は生半可ではありません。
そんな私は友人の獣医さんからのサポートや訓練士の友達から助けてもらっているのです。

つまり、お金儲けのためにできる仕事ではありません。

また、仕事の大変さに比例するようにお金をもらえる訳でもありません。

よく他人から、「よくそんなにお金にならない仕事をするわね。感心するわ。生活しないといけないんだから、もっと考えて仕事すれば?」と言われます。


私は、経歴が長いのでまだいろいろな意味でギャラの金額も新人さんから比べで高いと思います。

そんな私でもこのような状態なのですから、技術も知識も情報も少ない人がどれだけ仕事として成り立たせていけるかと考えると難しいと思います。


また、技術も犬のトレーニング技術だけでなく、人に教える技術も必要です。
他人に教えることはとても難しいものです。


プロになるためには、デルタのガイドラインから考えると知識、技術、情報の3つの要素をそなえていなければなりません。

技術は、自分の犬だけでなく、他人の犬の扱いも手がけていなければなりません。
その場で出会った犬つまり生徒さんの犬をハンドリングできることも技術として重要です。

きちんと対応できるようにならなければなりません。

つまり自分の犬のトレーニングができるだけではプロとしては通用しないってことです。

それも犬の基本的な行動や学習理論を知った上で、トレーニングプログラムを考え、飼い主さんの教育のための方法を考えなければなりません。


飼い主さんの中には、インストラクターを困らせる人もいます。
そんな人への対応もできなければなりません。

通って下さる生徒さんの技術の向上を結果として出さねばなりません。


たくさんの情報の中から重要な情報をえり分けて、その情報を生徒さんたちに還元するにも工夫が必要です。


ある人からインストラクターで自分が受けてきた外国の有名な講師の名前を上げて、自分がどれだけ勉強しているかをアピールしている人がいると聞きました。


どんなに有名な人の話でも、聞くだけなら誰でもできます。
話を聞いて、知識が増えたとか、高い情報を知っていることが指導者に必要なのではありません。

自分が教える人にどれだけ役に立つ情報にすることができるかが重要なのです。

私から言わせれば、外国の有名な先生よりも日本にもたくさんの勉強させてもらえるような知識、技術を持った先生はいらっしゃいます。

前に手伝っていたある団体の代表に、「経験なんて意味ありません。長い経験を持っているからなんだと言うんです?」と言われたことがあります。

その人は、自分にトレーニングを教えてくれていた私の友人のインストラクターに、とても失礼なことをしていました。

どんな立場になろうとも、自分が勉強させてもらった先輩を大切にできないのは、人間として問題があるように思えてなりません。


今の自分は、自分だけで作ってきたんじゃないはず、教えてくれ、導いてくれた人がいるはずです。

私が教えていた生徒さんたちの中に、自分が教える立場になった今でも私の教室を手伝いに来てくれ、「勉強させてもらいます。」とわずかなお礼でも喜んできてくれる人もいれば、某団体のライセンスを取ったとたんに全く姿を見せなくなったり、礼儀を欠いているようなことを平気でしている人もいます。

何年も長い間付き合ってきても全く変わらずにいてくれる人もいれば、何を勘違いしたのか急に態度が変わる人もいました。

その人の品位がわかると思います。


そして、情報は知っているだけでは何の意味もありません。
誰の話を聞いたかなど個人の自己満足に過ぎません。


それをどんな風に応用できるかが重要であり、それができる人は案外少ないのです。

自分が受けたセミナーを並び立てることしかできないような人は、まずそれを自分の教室に利用できるだけの応用力を持っているとは言えないと思います。


指導者としての知識は、飼い主教育に生かされなければ意味がないのです。
それに犬についてだけでは、誰かに教えることはできません。
人の心理学も勉強し、コミュニケーションの取り方を円滑にする方法をしっかり身につけていなければなりません。


そして、その情報をしっかり交換できるようにネットワークを作らねばなりません。

そんな意味でも自分が世話になった人は、大切にして、恩恵にあずからねばなりません。


私は、うちのスクールでアッシー君やってますよ!

とにかく、いろいろな人からいろいろな情報を得て、それを自分の教室で活用しなければならないのです。


苦労が多い割にむくわれないことの多い仕事ですから、よほどの意欲を持っていないとできないと思います。


こんなに大変なのに、それがギャラに加味されないってところが悲しい仕事なんです。

それでもインストラクターをあなたは目指しますか?