巷では、「モラルのない飼い主の非道」や「正しい知識のない飼い主によって虐待される犬たち」というタイトルで問題定義されることが増えてきているように思えます。


犬に関する問題は、全て知識のない非道な飼い主によって作られているというのでしょうか?

私にはそんな風に思えません。

飼い主の問題は、実は適切に指導する者がいないことを示しているのだと思うのです。


ひどいことと思われることをする飼い主でも、しつけ教室に通っていたりします。
情報を得る努力をしている人もいます。


飼い主に対して「正しい情報とは?」というセレクトができない環境があるのではないえしょうか?

そしてそれは、良き指導者の不足を意味しているのではないかと思えてなりません。


大きな団体の指導者の育成プログラムをいくつか経験させていただきました。

残念ながらどの団体にも問題を感じています。


アメリカの指導者育成に詳しい友人にアメリカでやっている指導者育成プログラムの話を少しだけ聞かせてもらったことがあります。

そして、幸運なことにそのプログラムを手がけているインストラクターさんの指導者向けのプログラムを日本で受けることがありました。


今、日本の団体で行われているようなプログラムとずいぶん異なっていると思いました。
日本においては、犬の行動学、心理学を学ぶことばかりが優先しているような気がします。


先日、10年以上前からしつけ教室について指導者として話してきた友人との会話の中にもその問題についてありました。

私たちの結論は、日本においては「飼い主行動学」「飼い主心理学」があまりにもぞんざいにされているということです。


私たち指導者が学ばねばならない素材は、私たちが教えている生徒さんたちからヒントを得なければ何も解決しないということです。

飼い主さんの気持ちも考えずに、自分の知識をひけらかすだけでは飼い主教育はできないことにそろそろ指導者たちも気付いて方向転換する時期にきたのではないかということです。


しかし、未だに「やれ犬の行動学だ」「また、新たな学説が発表された」なんてことに振り回されているのが現実のように思えます。

専門的な知識は学者先生におまかせして、私たち指導者は飼い主さんと向き合って、問題解決を図らないでどうするの?って思ってしまいます。


偉そうに言ってる私も実は自分の知識欲に負けて、セミナーに通い歩いた1人です。
その経験から言えることは、どんなに良いセミナーに出ても、自分の教室で生徒さんたちに還元できていなければ意味がないってことです。


海外からの犬の行動学のセミナーにいつも参加している友人で犬をとてもじょうずにコントロールできる人は少なくとも私の知っている限りではいません。

反対に、問題を抱えて困っているからとセミナーや教室に通いまくっている人ならいます。


ある生徒さんだった方で指導者になった人が、セミナーに行ったと話してくれたので、「どんなことを学んだの?教室に還元できることは?」と聞いた答えが、「さぁ〜どんな話ってよくわかりませんでした。自分が聞くだけで精一杯なので、とても生徒さんになんて考えられません。」でした。


現実的に、これだけ目の当たりにしているのに、どうして今のままじゃダメだって誰も言わないのか不思議です。


これでは良い飼い主教育はできないと思う訳です。

そして、この話ではないですが、指導者の意識改革がなされていないことが飼い主教育の1番の問題点であると私は考えます。


飼い主の行いを責める前に、まず飼い主教育の問題点の解決を図らねば、この国の飼い主を変えることなど不可能ではないかとさえ思えます。


ついでながら、私は常に指導者ではありません。
飼い主である時もあります。

私は常に良き飼い主や良き指導者ではありません。

普通の飼い主で、普通の指導者です。

過ちや、失敗を何度も繰り返し、反省し、悩み、打ちのめされ、それでもめげずにがんる人ではあります。


どうか私を聖人に仕立て上げないで下さい。
私は神様でも、優れた賢人でもありません。

ただ、自分だけの力でなく、たくさんの周りにいる方々の力を借りて、できるだけ正しい方向にみんな出向けるように全面に立っているのにすぎません。


どうか、私に力を貸して下さい。
たくさんの声を聞かせて下さい。

私は、私に対する賛成の声だけでなく、反対の声も大切にしたいと思っています。
私の知らないところで私の批判をせず、堂々と意見を交わしましょう。


生徒の立場であろうと飼い主としては平等です。

少なくとも私は私に対する意見を聞くだけの度量を持っていると思っています。

ぜひ、聞かせて下さい。


聖人に奉られるよりもずっと私にとっては意見される方がありがたいのです。