犬のトレーニングは、『正の強化』(犬の良いと思う結果を行動の後に出すことで、その行動の頻度を上げる)のみでできると思っている人がいるようです。
教える時に、ただ犬をほめているだけでは簡単なことならいざ知らず、レベルが上がってくると、とても伝えづらくなります。
 
結果が自分の行動とつながっていると犬に気付いてもらえるようにするには、良い結果と悪い結果を提示することが効果的だと思うのに、なぜ『正の強化』だけとみんな言うのかを、私なりに思うことがあります。
人が自分が良いトレーニングをする人だと自己満足していたいからなのかも知れません。
 
「犬にわかりやすくするには?」
と考えるのであれば色々と試すべきであると私は思って、方法にこだわらず犬の様子を見ながらやってきました。
 
結論は、「ほめるだけでは教えられない」です。
 
犬の性格にもよりますが、「それをしてはいけない!」と伝えた方が犬の良い行動につながったことがたくさんありました。
ただ、なぜ犬の行動の望まない行動に対して結果を出さないことが良いとされてきたかと考えた時、犬のやる気を嫌悪刺激を使うことで落としてしまう恐れがあるからだと思うのです。
また、嫌悪刺激を出すと、関係も崩れるとされています。
 
でも、本当にそうでしょうか?
もちろん、関係が希薄で信頼を犬から得ていないならば、関係は崩れてしまうかも知れません。
人間で言えば、あまり知らない人から、自分の行動を悪く言われると、その人をうとましく思ってしまうことがあります。
関係の薄さは、時間や間柄では決められません。
親子でも関係が希薄であれば、大きな溝ができてしまうこともあります。
関係作りの難しさは、目に見えないものであると言う事です。
相手と自分との関係は、自分だけが意識しているだけでは計り知れません。
相手の自分への行動を見ながら、判断する観察能力が必要です。
 
ただ、ごほうびの種類や与え方だけを考えていても、決して良い関係は築けないと私は思います。
犬と楽しい時間を過ごし、犬の行動から自分へのメッセージを読み取り、気持ちのキャッチボールができるようにならなければ、良い関係など築くことはできないと思うのです。
 
理論も理屈もとても大切ですが、もっと大切なのが関係作りです。
お互いの信頼関係をより強くできるようにすることや、犬から安心できる存在だと思ってもらえるようにならなければなりません。
ある行動学の本に「心理学がいかに理解できていても、犬のトレーニングがうまくできる心理学者はいない」と書いてありました。
私もそう思います。
 
私の友人でとてもトレーニングのうまいトレーナーは、本を読むのが大嫌いで理論を全く覚えようとしません。
でも、トレーニングがうまいのは事実です。
彼女は、とても犬と良い関係を築くことができます。
もっと理論を勉強してくれれば、今よりもっとうまくなれると私は思います。
2つの相乗効果でより良いものになるのだと思います。
 
関係作りは、普段の生活の中で作るものだと言う事も忘れてはいけません。
特別なことをするのではなく、普段に犬との関わり方を見直して見て下さい。
きっとそこに見落としていた大切なものがあると思いますよ。